故郷・近江高島より。つくること。育む事。
今、私に出来る最良の菓子をお届けするために。
土壌づくり
五月の頃、小豆栽培に適した土を作るため、有機肥料を加えながら土を耕します。
自家栽培の小豆畑
初秋の頃、発育具合を確かめながら、花のつき具合等見守ります。
小豆の花
九月の頃、黄色の花が咲きます。蜜蜂さんがんばって!!
自家栽培高島大納言小豆
十一月、収穫の頃、完熟したさやを手づみし、乾燥・選別し、大納言小豆が出来上がります。
霊薬山 正傳寺の薬水
高島市生水の郷地域にある正傳寺の湧水を菓子の材料にすべて使っています。
自家栽培高島大納言小豆
餡づくりの昇華をめざして。
辿り着いた答えは、
生まれ育った故郷で、自ら小豆を育てることでした。
滋賀の湖西地方にある我が故郷・高島は、寒暖差が大きく、豊富で美しい湧き水と、
肥沃な土に恵まれています。
そんな地の利を最大に活かして栽培された高島大納言小豆は、薄皮で、たいへん大粒に育つことが特徴です。
この小豆を用いた菓子の核となる餡は、皮が柔らかく口溶けも良く、ほおばった瞬間から口いっぱい滋味に溢れます。
お菓子づくりの根幹となる餡の基、菓子職人として納得ゆく小豆とは何かを突き詰めた時、極めた答えは「自分の手で育てたい」という揺ぎない思いでした。
しかしながら小豆を菓子材料に用いる消費者側から、自ら小豆づくりに携わる生産者側となって、一番に感じたのは生産者の皆さんのご苦労でした。
厳しい自然と向き合う農業はつねに天候に左右され、種を蒔く時期により成長や収穫度合いも大きく変わります。
適格な時期を知るには、長年の経験を経てはじめて分かる事だと、深く気付かせて頂きました。
また、苦労を重ねて無事に育ったときの大きな感動から、自然より享受した賜物への感謝や、学ぶことの虚心が芽生えました。
お菓子作りもまさにこれに似て、ひとつひとつの経験を積み重ねてようやく、よい菓子を作る技術や感性が養われます。
すべてのものづくりは、日々のひたむきな努力と経験、これらの機会が与えられてこそ初めて、成り立つものです。
これまでの菓子づくりと、新たな挑戦として始めた小豆づくりで得た経験は、素材への深い愛情、もてなしに尽くす誠の心と結実しました。
この貴重な材料の持つ、小豆本来の味を最大限に活かし、豊かにして謙虚、かつ繊細な味わいがけっして損なわれることの無いよう、極めて程よい甘さの餡として、仕上げさせていただいております。
比良山系の伏流水
素材の味そのものが命の和菓子だからこそ、
水にこだわりました。
滋賀県高島市新旭町。
比良山系に降った雪や雨が伏流水となり、集落を張り巡らせた水路には、「生水(しょうず)」と呼ばれる美しい湧き水が流れています。
鉄分を多く含んでおり飲料は勿論、野菜や穀物などの食材を洗ったり、果物等を冷したりした後、洗い物で出た食べかすなどは端池に飼われる鯉が食べ、綺麗になった水は水路を流れて隣家へ、やがては琵琶湖へと流れてゆきます。
私の栽培する「高島大納言小豆」も、美味しく、体に優しい小豆を目指し、また微力ながらも環境や生態系に配慮した化学肥料を使わない小豆として、この美しい水が流れる高島・新旭の土と水で育んでおります。
名水にあやかり酒蔵や豆腐屋などが並ぶ集落には、静かに佇むお寺があります。
その名は「霊薬山 正傳寺」。
保延年間の創尊、永平寺直末中本寺格で近江三カ寺のひとつにて、木造の薬師如来座像は県の重要文化財に指定される由緒あるお寺です。
こちらの前庭にもこんこんと美しい水が湧き出ており、その云われから薬水とも称されています。
聖なる水。清めの水。美味しく体に優しい水。
高島で育む小豆と共に、菓子づくりに活かそう。
山川の菓子はすべて、清い自然と人の優しさに溢れる霊薬山・正傳寺に湧き出る水にて、作らせていただいております